2023年度7月例会
石膏ボードから循環型社会への貢献
- 日程
- 2023年7月27日
7月27日(木)、JIA渋谷の7月例会は、石膏ボードのチヨダウーテ株式会社の石井優輝氏より「石膏ボードから循環型社会への貢献」をお話しいただきました。例会での建材メーカーさんのレクチャーは久しぶりの開催です。単純な商品紹介のお話しではなく、100%リサイクル石膏を原材料とする「チヨダサーキュラーせっこうボード」の商品化に至った背景として、石膏という素材の本質や歴史、業界の現状、課題等をわかりやすくご説明くださり、今後建築設計をしていくうえで知ってよかった、他では聞くことができない貴重なレクチャーでした。これまで内装の下地材としてあたりまえのようにスペックしてきた石膏ボードに対する考え方を改めることとなりました。
石膏ボードの原材料には「天然石膏(輸入)」と「化学石膏(火力発電所や工場等で副産物として発生)」の両方が併用されるそうですが、近年の脱炭素の流れの中で火力発電所が減少しているため、原材料の化学石膏が不足し天然石膏の使用割合が増えてしまうというパラドックスが起きているそうです。一方で、石膏という素材の化学的性質から、廃石膏ボードを石膏ボードの原材料として再利用できる割合は低く、一般的には10%程度(チヨダウーテ社の標準品では20-30%)とのこと。廃石膏ボードの大部分は再利用が叶わず、産業廃棄物として埋め立て処分されている状況だそうです。チヨダウーテ社はこの現状を打破すべく「原材料100%リサイクル石膏」の商品開発に取り組まれ、「廃石膏の大型結晶化」の技術開発のみならず解体廃材の回収をはじめとする仕組みをつくり、コスト的にもうなずけるレベルで事業化・商品化されました。そのご苦労は想像に難くありません。廃石膏ボードは自社製品に限らず引き受け、循環型の社会の実現に貢献したいという彼らの努力を知り、設計者として感謝の気持ちがこみあげました。昨今は応援・共感を付加したお金の使い方を選択する消費者も増えており、ぜひクライアントにも伝えたいと感じる内容でした。
また、100%リサイクルは世界初ということで、オンラインで海外から参加くださった蒔田智則さんと池田麻美さん(コペンハーゲン)、Charlie Ngovさん(アメリカ・サンディエゴ)にとっても新しく有益な情報だったとのことです。チヨダウーテ株式会社の石井優輝様、我妻直昌様、ありがとうございました。
(ファイブス一級建築士事務所 蔵楽友美)