2022年度8月例会

国立近現代建築資料館見学

8月25日(火)、湯島の国立近現代建築資料館で開催中の『「こどもの国」のデザイン―自然・未来・メタボリズム建築』展へ訪れました。

横浜市青葉区の「こどもの国」は、現上皇陛下の御結婚に際して寄せられたお祝い金を基金とし、国費や民間団体・企業・個人の寄付によって1965年に開園した、自然豊かな子供の遊園です。現在も広大な敷地に湖、牧場、プール、ゴーカート、遊具の広場、バーベキュー、キャンプ場等々の様々な施設が整備されていますが、本展覧会では開園当時の施設やパビリオン(現存するもの、現存しないもの、計画のみで実現しなかったものまで)の図面、写真、その他資料等を拝見することができました。この計画に携わったのは、浅田孝、大谷幸夫、黒川紀章、大髙正人、菊竹清訓等のメタボリストグループでした。展示のご案内をいただいたのは、本展覧会の企画構成をなさった小林克弘氏(主任建築資料調査官・東京都市大学名誉教授)、小池周子氏。展覧会図録の冒頭文とあとがきをご担当されたお2人にご案内いただく贅沢な見学会でした。誠にありがとうございました!

敷地とプログラムの自由度の高さゆえか、建築を考えるわくわくする気持ちを刺激される図面群。地域会メンバーからは「なんだか学生の卒業設計のような図面だね」とのコメントもあり、半世紀前ののびのびした時代の空気に思いを馳せました。自然の中に美しい造形のメタボリズム建築が点在する、そんな見たことも無い風景の数々に当時のこどもも大人もさぞ興奮したであろうと想像。建築自身が風景と場の魅力をつくりだした開園時から、その後に建設された施設群がアトラクション的になっていく事実(東京ディズニーランドの開園が1983年)に気づかされる等々、60年代から現代までの価値観や日常の変容を感じる展覧会でした。寄付のお金で建設することを考慮しての?VE案的なデザイン変更の変遷がわかる資料、妥当な設計フィーへの理解を求めた経緯の資料等々に触れ、現代でもやることは同じだとも感じさせられました。あとがきに記された「情熱と現実の間」との言葉に頷き、当時の建築家たちの「情熱と現実」、現代のわれわれの「情熱と現実」を考える帰り道でした。

そのほか、今回初めて拝見した「裏焼図」について地域会の先輩方にその使い方(表裏で消す・消さないの管理や設備プロット等に利用)を教えていただいたり、トレーシングペーパーの縁のテープやミシン目についてのTips、旧岩崎邸庭園に脚を運んだあとの暑気払い会では新規収蔵資料(吉田鉄郎の著作図版、角田栄のスケッチブック)についてのひと談義、次回例会の企画など、話が尽きない8月例会でした。世代MIXが渋谷地域会の醍醐味、地域会メンバーで外へ出て街に出かける体験型の例会を今後も企画していきたく思います。(ファイブス一級建築士事務所 蔵楽友美)

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