2019年5月例会
「クラムハウス」見学会
5/23(木)17:00~18:50 場所、クラムハウス
笠井会員が設計した自邸であるクラムハウス(世田谷区深沢、自宅/設計事務所/モデルハウス)の見学会は参加者12名、その後の飲み会(於レストラン華屋与平衛駒沢公園店)は参加者11名と大盛況でした。
外観は、いかにサインを目立たせるかをテーマに、車と建物外壁の色を限りなく同化させたこと、
夜もサインを煌々とライトアップして宣伝効果
を高めたことについて、説明がありました。
また、日影検証で建物高さをできる限り高くし
十分な各階高さを確保したとのことです。
内観は、事務所を兼ねた広い玄関や、階段を取り込んだリビング、眺望と座る目線からセットされた快適な大窓、外周を巡る光溢れる吹抜け階段等、コンパクトハウスならではの様々な工夫について説明がありました。
率直な感想としては、限られたスペースの中で、家族の居心地と事務所機能を遠い将来まで精緻に考え尽くされた、フレキシビリティの高いロングライフのデザインの建物だと思いました。
この建物は、従来のモデルハウスの常識をことごとく打ち破るものに見えます。
< 一般のモデルハウス → クラムハウス >
・大きな邸宅を見せて夢を与える。
→ 極小空間でもゆったり住めると安心できる。
・生活感のない綺麗な状態を見せる。
→ どう収納したかという実生活の工夫を見せる。
・5年程度ごとに新たに建て直す。
→ 劣化が感じにくいロングライフの建物をつくる。
・用地賃料、建設費、人件費、宣伝費がかかる。
→ 自宅なので賃料建設費ゼロ、自分で説明するので
人件費ゼロ。建物自体が広告塔で宣伝費ゼロ。
これこそ誰もがちょっと見てみたくなる、気軽なモデルハウスなのではないかと思いました。
また、一般の建売住宅との違いも語られました。
< 一般の建売住宅 → クラムハウス >
・床面積、~LDKが評価の尺度であるため、そこに現れない部分でコスト削減を図る。各階高さの圧縮、階段の圧縮、窓の小型化、大量流通品のスイッチ、インターホン、木材構造コストが安価になる間取り(例えば階段を中央に壁で固める等)。
→ 日影検証などでボリューム最大化、ゆとりある階高さ、光溢れる吹抜け階段、3次元モデリングで追及する周辺環境と家具配置にマッチした快適な大きな窓、最先端高性能デザインの家具什器、木材構造コストより空間の豊かさを追求する。
作り手による経済合理性、売上が追及された住宅ではなく、住み手の快適さ、土地の資産価値最大化を徹底的に追及するとのことで、時間をかけてじっくりと設計しなければ、こういう建物はできません。何と周辺建物や家の中の家具まで、全て3Dモデリングして外観、窓、内部空間を検証するとのこと。
PS: 見学会後の飲み会では、諸先輩方よりJIA日本建築家協会の歴史や今後の課題などについて熱い議論がなされ、美味しくてお手頃な料理とともに、とても有意義で楽しい会となりました。